1.「演じるな!」とは?/2.インプロとは?/3.スタニスラフスキーって?/4.スタニスラフスキー・システム?/5.ブレヒト?

1.「演じるな!」とは?
今稽古している作品の演出家からよく「演じるな!」と言われます。他の役者が以前その意味について質問し、その時はなんとなく分かった気になったのですが、結局分かっていなかったようで、また同じことを言われるのが不安です。

「演じるな」という意味はどういう意味なのでしょうか?
私はその演出家のことを知っているわけではないのではっきりと答えるわけにはいきません。とんでもない答えをあなたに教え、あなたや演出家に逆に迷惑を掛けてしまうことはしたくないですからね。

という前提で、もしその演出家が私なら、それは次のような意味で「演じるな!」と言っています。

役者はつい登場人物の気持ちを表現しようとしがちです。

しかし、例えばあなたはある人に嫌なことを言われた時、普通はわざわざ「むかつく気持ちを表現しよう!」と思いながらブスッとするわけではないと思います。

その時あなたはつい反応してしまったのです。

演出家である私はあなたに共演者の言葉や態度につい反応してしまった姿を見せて欲しかったのです。

その時の気持ちを表わそうとするのではなく、その瞬間を役として生きて欲しかったのです。

登場人物であるあなたは、誰かが、もしくは何かがあなたに何かを起こさせるまで何もしなくてもいいのです。

ただ反応すればいいのです。

これが「演じるな!」という言葉の意味です。


2.インプロとは? 
所属している劇団の稽古に「インプロを取り入れようか?」という事になっているらしいのですがインプロってなんですか?
インプロというのはインプロビゼーション(即興)の略で、演技法の一つです。

また、台本がなく、その場で起こったことを受け入れながら即興で作られていくエンターテイメントのことを指す場合もあります。

最近ではコミュニケーション術に関連し教育関係等、演劇以外で使われる機会も増えているようです。

アドリブという言葉は本来インプロビゼーションと同じ意味で使われていたのですが、よくあるのはただ台本に書かれていないだけで、実は俳優が前もってその言葉や動きを準備しているという場合です。

この場合、その言葉や動きは現場の瞬時の思いつきで作られたものではないのでインプロビゼーションによるライブ効果は全く期待できません。

インプロビゼーションを利用する演技法は役そのものがその場に生きることを助けます。いつも新しい空気を感じながら演じることができるのです。

インプロビゼーションを利用すると、その場の微妙な雰囲気の変化や相手のセリフの言い方の変化等にどんどん影響を受け、自分の芝居が変化してしまうのを感じることができるはずです。

インプロビゼーションによって演技が動き出すと、演技する瞬間瞬間がその前の瞬間の心理的な影響によって形作られていきます。

そこには決して論理的な解釈が入り込むことはありません

論理的なものを入れてはいけないのです。

そのことにより俳優は役としてその場に生きることが容易になるのです。
  


3.スタニスラフスキーって?
「お前はスタニスラフスキーか?」と劇団の先輩に言わ
れたのですが、スタニスラフスキーってなんですか?
カー!スタニスラフスキーというのは物ではなく名前です!

コンスタンチン・セルゲイビッチ・スタニスラフスキー(1863-1938)ロシアの俳優、演出家。

モスクワ芸術座を設立し、そこでの舞台活動を通じてスタニスラフスキー・システムと呼ばれる革新的かつシステマチックな俳優教育理論を確立しました。

私が教えている演技法もこのスタニスラフスキー・システムを基本においています。


4.スタニスラフスキー・システム?
スタニスラフスキー・システムというのは何ですか?
ひとことで言うのは非常に難しいですし、言葉で伝えてもなかなか理解しにくいものなので私たちのような専門家がいるのですが、

誤解を恐れずに説明すると、

「〜のように見える」という表面的なものを求めるのではなく、
俳優が自らの感覚、感情や経験を思い起こし、
それを役の感情に応用することにより役そのものとして生きることのできた演技こそが最も芸術的な演技であると言う考えをベースに、
それらを勘とか偶然ではなくシステマティックに確実に得ることができるようにするための方法論のことです。

なんだかわざと難しくいってしまった感じもするのですが、要するにこれは、俳優が役のフリをするのではなく舞台上で真に役として生きることができるようになる方法を説いたものです。
ロシアのスタニスラフスキーという人によって作られました。

この考えを基にアメリカでは「メソッド」と呼ばれる演技法がリー・ストラスバーグ等によって考案され、ニューヨークのアクターズスタジオというところで主に教えられました。

ここからはマーロン・ブランド、ポール・ニューマン、ダスティン・ホフマン、ロバート・デ・ニーロ、ジェームス・ディーン、ピーター・フォーク…と他にも覚えきれないほど数多くの有名な俳優が排出され「メソッド」は一躍有名になりました。

それによりこの「メソッド」はスタニスラフスキー・システムと同じ意味で使われることも多いようですが決して全く同じことを言っているというわけではありません。


5.ブレヒト?
演技の先生から「スタニスラフスキーとブレヒトぐらいは勉強しておけ」と言われたのですが、ブレヒトってどういう人なのですか?
ベルトルト・ブレヒト(1898〜1956)ドイツの劇作家、詩人。

スタニスラフスキーを含む従来の感情移入に基づいた演劇方法は観客を主人公の考え、感じ方に無意識に共感させ、劇場を催眠術の場と化し、観客を受動的にすることによって観客が作品を批判的に見る権利を奪うものだ主張しました。

俳優に対しても「役そのものを生きる」ことを求めたスタニスラフスキーに対しブレヒトは一歩引いた視点で社会に潜む疑問点を暴き立てるために役と観客の仲介者であることを求めました。

脚本の主人公に対し観客が、言ってみれば無理やり共感するように芝居を作ることは観客に対して失礼ではないか! という考え方です。

代表作は。『三文オペラ』『ガリレイの生涯』『肝っ玉おっかぁと子供たち』『セチュアンの善人』『コーカサスの白墨の輪』など。

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